IFRSの実務

【連結決算】IFRS(国際財務報告基準)の学習方法をベテラン経理が解説【プロジェクト成功へ導く】

IFRS

この記事で解決できるお悩み

 

この記事を書いた人

 

ぷらいむ
IFRS検定の合格証書です!

合格証書

 

ぷらいむ
わたしはIFRS適用企業で働いています

IFRS導入にも関わったので、基本から学習しましたよ!

 

わたしは『日本基準』から『IFRS基準』への移行プロジェクトに参加しました。

 

社内でIFRSに詳しい人はいなかったので「書籍を読む」「セミナーに参加して知識を身につける」などして、IFRS開示のプロジェクトメンバーの一員として成功することができました。

 

読み終わった後は、IFRSの学習方法と、プロジェクトに参加をして得られる知識を理解できます。最後まで読んで下さい!

 



IFRSの全体像を解説

IFRSの全体像

ぷらいむ
IFRSとは何か気になりますのね!解説します!

 

全体像①:IFRSはどんな基準

IFRS(International Financial Standards/国際財務報告基準)とは、IASB(国際会計基準審議会)によって設定された「会計基準の総称」です。

読み方は「イファース」「アイファース」「アイエフアールエス」があり、いろんなセミナーに参加しましたが、決まった読み方はありませんでした。

 

2005年に、EU域内の連結財務諸表に対しての強制適用を契機に、また、2008年のG20による「単一で高品質な国際会計基準を策定する」ことが目標に掲げられてから、IFRSは世界で急速に普及しました。

 

日本の開示は4種類認められています。開示企業が多い順番にすると以下にようになります。

 

日本で認められている開示基準

  • 日本基準
  • IFRS
  • 米国会計基準
  • 修正国際基準(JMIS)

 

「IFRS」「日本基準」に続き、2番目に多い開示基準です。

 

「米国会計基準」はトヨタ自動車が採用していましたが、2021年3月期に「IFRS」へと移行しました。

 

全体像②:IFRSの現在

現在、140カ国以上で、IFRSが採用されています。日本でのIFRS適用企業は200社を超え、IFRSを適用した新規上場も増えています。

 

日本では2009年ごろから「今後は強制適用になるかも?」と、IFRSの波が押し寄せてきました。しかし、議論がなかなか進まず、東日本大震災もあり、強制適用の話は先伸ばしになり、現在に至ります。

 

2021年では?

収益認識が大きな議論となり「日本基準」「IFRS」に寄り添っています。コロナの関係で新規上場の会社数が減りましたが「IFRS」の需要は伸び続けています。

 

全体像③:IFRSの今後の展開

IFRSが今後どのように、日本基準と関わってくるかが、経理業務には重要です。

 

IFRSの導入による影響

決算作成における会計基準の変更だけではなく「財務数値」や「財務報告プロセス」はもちろん「内部統制」「情報システム」「税務」「財務」など広範囲に及びます。経理業務だけに、とどまりませんよ!

 

また、諸外国と財務諸表の比較ができるので、海外からも注目が高まります。IFRSは「多くの業種や職種に必要な知識」になります!

 

※『IFRSの概要を詳しく知りたい!』という方は、以下記事で読んで下さいね。

おススメ記事
IFRSとは
【IFRSとは?】IFRS導入企業で働くベテラン経理が基礎を解説【国際会計基準とは?】

続きを見る



IFRSに関連する3つの資格

IFRSに関連する資格

ぷらいむ
IFRSを学習するための「資格」を解説していきますね!

 

資格①:IFRS検定(アビタス)

ロンドンに本拠地を置くICAEW(The Institute of Chartered Accounting in England and Wales:イングランド・ウェールズ勅許会計士協会)が、IFRSの広範な目的と理解力を図ることを目的として、IFRS検定(国際会計基準検定)を運営しています。

 

IFRS検定の概要

・受験資格
なし

・試験時期
年3回(2月・6月・11月)

東京と大阪で受験

・検定費用
47,300円(早期割引価格:40,700円※先着30名)

・試験方法、範囲
マークシート60問(日本基準にはないIFRS特有の項目を含めて幅広い範囲となっている項目が多いので主要な項目を抜粋
■財務諸表の表示
■キャッシュフロー計算書
■工事契約
■法人所得税
■政府補助金の会計処理及び政府援助の開示
■金融商品
■投資不動産
■企業結合
■事業セグメント
■連結財務諸表
■財務諸表作成に必要な知識と開示に必要な知識を学習する。
etc…

・学習方法
市販のテキストではIFRS検定に特化した教材少ないので。一番多く受講されているアビタスの講座を前提とする

・学習費用
IFRS検定講座
受講料203,500円(2020年8月時点)(税込)
入会金11,000円(初めて受講する場合)
全20回講座

IFRS検定の「メリット」「デメリット」について、解説しますね。

 

IFRS検定を学習するメリット

  • 実務では学べないIFRSの歴史を含めて、知識を広く浅く学ぶことができる
  • オリジナルテキストで図解を使って解説をするので頭に残りやすい
  • 主要論点の条文が英語も併用記載されていて、英語の学習になる
  • 通学、WEB講座共に全20講座を「2年間何度も」受講することができる

 

IFRS検定を学習するデメリット

  • 広く浅く学ぶため実務で、そのまま使える内容にはなってない
  • 日商簿記1級の知識があれば、基本的な部分も説明があるので、退屈に感じる
  • 検定費用と受講費用で約250,000円と高額
  • コロナの関係で教室講座と自習室の使用に制限がある

 

 

資格②:国際会計検定(batic)

BATICとは「東京商工会議所が主催する国際会計検定」です。名称は「Bookkeeping and Accounting Test for International Communication」に由来します。

 

どんな検定か?

BATICは、IFRS(国際会計基準)による会計スキルと、ビジネスシーンに必要な英語力の2つを同時に測る検定試験で、試験内容は英語です。 合否の判定はなく、TOEICなどと同様にスコア制の点数制度を採用しています

 

注目されている試験です

現在、日本では国際会計基準の適用が推進されています。このことから、BATICは国際会計基準を適用する準備として、企業や会計職から注目を集めている検定試験です。

 

国際会計検定(batic)の概要

・受験資格
なし

・試験時期
年2回(7月・12月)
各商工会議所

・検定費用
10,340円(ただしSubject1のみ5,500円、Subjet2のみ8,140円)

・試験方法、範囲
Subject1 英文簿記
マークシート方式・記述式 400点満点
項目が多いので主要な項目を抜粋
■会計と簿記の基本概念
■仕訳帳と元帳
■試算表
■決算修正仕訳
■基本的な前提とGAAP
■財務諸表分析
■内部統制
etc…
基本的な概念と試算表作成や分析が範囲となっている。

Subject2 国際会計理論
マークシート方式・記述式 600点満点
項目が多いので主要な項目を抜粋
■IFRSとその概念フレームワーク
■財務諸表
■公正価値測定
■金融資産、金融負債
■収益認識
■キャッシュ・フロー計算書
■企業結合と連結
■事業セグメント
etc…

それぞれの項目の論点とキャッシュフロー計算書・事業セグメントといった開示項目も範囲となっている。1,000点満点でスコアによって称号が付与される。

batic
参考:東京商工会議所

・学習費用
■公式テキスト
Subject1 2,750円(税抜)
Subject2 3,400円(税抜)

■公式問題集
Subject1 2,500円(税抜)
Subject2 2,600円(税抜)
合計11,1250円

■TAC
Subject1・2ダブル受験本科生(簿記未学者コース)
102,000円(税込)
全30回講座

Subject1・2ダブル受験速修本科生(日商簿記3級学習経験者コース)
92,000円(税込)
全26回講座

国際会計検定(batic)の「メリット」と「デメリット」について、紹介します。

 

国際会計検定(batic)を学習するメリット

  • 問題が全て英語なので、「英語」と「IFRS」の学習になる
  • 上記以外にも経験者に向けた講座があるので、自分のレベルに合わせて受講できる

簿記と英語と合わせて学習できる唯一の資格です。仕事で、英文財務諸表を見る場合は、この資格の知識がとても役に立ちます。合格不合格はなく1,000点満点の試験なので、受験をするとあなたの知識のレベルが、より詳細に分かります。

 

国際会計検定(batic)を学習するデメリット

  • 広く浅く学ぶため、実務でそのまま使える内容にはなってない。
  • 英語の試験であるにもかかわらず、公式ページには英語ページや解説などが一切なく、国内でしか評価されにくい

英語の試験ですが、海外に向けては発信しておらず、日本国内の一部で評価される資格になります。資格としての価値よりも、そこから得られる知識が重要になります。

 

資格③:USCPA(米国公認会計士)

米国各州が認定する公認会計士資格です。

 

【無料で入手】3分ほどの簡単な登録をするとWeb上でパンフレットが入手できます。試験の概要を知りたい人は、ぜひ登録して読んでください。

>> USCPAのWebパンフレットを入手

 

どんな資格か

IFRSは「原則主義」に基づき財務諸表を作成するのに対して、米国の会計基準は「細則主義」を採用しています。IFRSと同じ考えの項目はありますが、異なる項目も多いです!

 

USCPAの概要

・受験資格
州ごとに異なります。
多くは4年生の大学で会計や法律に関する単位取得を求められます。

・試験時期
年12回
日本で受験する場合は、東京と大阪のどちらかで受験ができる。

・検定費用
日本でアラスカ州の受験をするとして、1ドル110円で計算をする。
1科目約1,200ドル✖️4科目=4,800ドル
4,800ドル✖️110円=528,000円
その他ライセンス取得費用 約100,000円

・試験方法、範囲
FAR:財務会計
BEC:企業経営環境・経営理念
AUD:監査論
RED:商法・税法
各試験時間4時間

・学習費用
>>アビタス講座を受講した場合
USCPAプログラム フルパック 763,000円
USCPAプログラム ライトパック563,500円


USCPAの「メリット」「デメリット」について紹介します。

 

USCPAを学習するメリット

  • 英語での試験になるので、「会計」や「税務」に関する「英語学習」ができる
  • 国によっては、手続きをすると海外でも会計士業務ができる

合格の難易度が高いので、合格をすると世界で評価される資格です。海外の企業だけでなく、日本に本社がある海外支社でも、英文財務諸表の知識がない企業が多いので、重宝されます。

 

USCPAを学習するメリット

  • IFRSと重複する部分はあるが、多くはUS基準と異なるので、IFRSの学習には不向きである

IFRSと基準が異なる論点があります。しかし、異なる論点を理解できると、会計基準を変更する企業で活躍できるます。合格するまでの費用が、講義料金を合わせると100万円を超えるので、かなりの高額になります。



IFRSの実務経験を通じて学習した3つの経験

IFRSの実務経験を通じて学習

ぷらいむ
IFRSの実務を経験して、感じた事があるので紹介しますね!

 

経験①:実務書で学べない

IFRSの実務書は、たくさん出版されています。

 

金融資産の分類の場合

IFRSの金融資産の分類は4つあります。

金融資産の4つの分類

①償却原価で測定

②FVOCI(リサイクリング可)

③FVPL

④FVOCI(リサイクリング不可)

保有目的によって分類されるのですが、実務書では分類できない有価証券がたくさんあります。例えば投資信託は単純に分類できないです。

 

それと、書いている内容がIFRS原文を翻訳しているので、なんとなく分かりにくいです。それをなんとか理解して、実務に落とし込むのは難しいですが、いろんな視点から考えるので、とても理解が深まります。

 

各論を検討するときに、自社特有の論点を「日本基準」と「IFRS」を比較をするのは大変です。

 

ただ、「大変なのはあまり事例がない」という事なので、自分で事例を作る事ができる「面白さ」があります!

経験②:注記の検討は困難

IFRSは最低でも20個ほど注記があり、日本基準比べてかなり多いです。

 

注記の検討の大変さ

IFRSを開示するときに、どのように注記をするかを決めるのは、本当に大変でした。基準で求められる内容を全て書くのは、量が多くなり難しいので「重要性の基準を作って」投資家に影響のない内容は省略します。条文一つ一つに検討が必要なんです。

 

IFRSでは日本基準のように「手引きに従って表を作る」のではなく「自社で考えて表を作ります」。物事は制限が多い方が決めやすいので、自由に記載していいと言われると、決めれなくなってしまうんですよ…

 

注記の検討が一番時間のかかる作業になります。現在では、他社事例が多くなっているので、参考にしながら作るのが良いです。

経験③:資料を集めるパッケージ作り

子会社が多い場合は、収集するパッケージを作り直す必要があります。

 

IFRS調整が必要

IFRSで開示する場合でも、子会社からは日本基準で報告をして、親会社で調整する場合があります。子会社でIFRS基準の調整をすると、税務調整が必要になるからです。

 

連結仕訳で対応する場合は「正しく繰り越しがされているか?」「セグメントの影響は問題ないか?」などを注意する必要があります。

 

会社数が多い場合は連結ソフトを使います。日本基準とIFRSでは仕訳の登録方法が異なるので、新しい環境で設定する必要があります。最初から設定する必要があるので、けっこう時間がかかりますよ。

 

ただ、この設定を触ることは、最初だけの作業で、なかなか経験できることではありません。設定を経験すると「社内で一番連結ソフトに詳しい人」になるので、積極的に経験した方が良いです!

 

IFRSプロジェクトで感じた3つの経験

IFRS業務に関わって感じたこと

ぷらいむ
わたしがIFRSプロジェクトで感じたことを紹介します!

 

経験④:大手監査法人の方が良い

わたしは規模の小さい監査法人とIFRSプロジェクトをしました。

 

感じたこと

監査法人はIFRSの知識はなく、一緒に問題を解決したのですが、答えが出ても「やっぱりこっちの方がいいかも」という話になったり「根本的に違うのでは?」という話になったりして、同じ議論を何度も繰り返した記憶があります。

 

何度も議論することにより、論点の根本が理解できた点は良かったですが、論点を熟知した専門家から、たくさんの論点を学習したかったです。

 

大手監査法人であれば、IFRS専門の担当者がいて、日本基準との差異も熟知しています。セミナーで質問をする事は出来ますが、一般論の返答しか得られないので、プロジェクトに専門の担当者がいる場合は「早く」「正確」な解決が出来ます。

 

経験⑤:有料の研究部に登録した方が良い

わたしは開示ツールは「PRONEXUS」を利用しています。

感じたこと

確認したい内容があれば、IFRS実務研究会に登録をしいるので、IFRSに関する他社事例や、どこの会社がどんな注記をしているか、まとめた資料を見る事が出来ます。

 

IFRSは「注記はこうするべき!」というルールがないので、自由度が高くて作成する時に困ってしまいます。そんな時に条文に紐づいた他社事例を見る事が出来るのはとても助かるんです!

 

監査法人に確認をする事も出来ますが、いずれは自分で解決する必要があるので、便利なツールの「利用」と「活用方法」を知っておいたほうが良いです。恐らくですが、IFRSプロジェクトをしている会社は、ほとんどが利用しているはずです。

 

経験⑥:覚悟が必要

わたしは転職をしてすぐにIFRSプロジェクトに参加しました。

 

感じたこと

分からない論点があっても「監査法人が取引を理解しているはずだから頼ろう」と思っていましたが、そんな事はありませんでした。わたしが分からない論点は、監査法人も分らないため、各論点を一緒に考えることで答えを出しました。なので工数がとてもかかりました。

 

通常業務の合間に考えるので「全てが+α」の負担になります。わたしはそれまでに「会計」「税務」「連結」を経験しましたが「IFRS」が一番難しい内容でした

 

IFRSプロジェクトに参加することは、IFRSの知識があっても進めていく中で、つまずく事があります。IFRSの知識がない状態で、プロジェクトに参加することは、知識をインプットしながら、仕組みを作っていくので、さらに苦労をします。

 

ただ、プロジェクトを完結できた時には、IFRSの知識が身について、プロジェクトを完結できた自信が生まれます。わたしは、プロジェクトが終えるまでは、残業が続いて大変でしたが、終えてみると、充実感に満ち溢れていました!

 

IFRSの学習に関するまとめ

IFRS業務のまとめ

ぷらいむ
ここまでで、IFRSの資格と実務を紹介しました!まとめますね!

 

私はIFRS検定を取得するために、アビタスに受講をしました。

 

受講した理由①

実績があり、2年間は何度も受講することができて、隙間時間に学習ができると感じたからです。

 

受講した理由②

全ての講座を学習して感じたことは、初学者向けの講座のため話すペースがゆっくりでした。さらに基礎的な部分も解説があるので、実務経験者は不要に感じました。

 

しかし、目次ごとに講座が細かく区分されていて、自分が学習したい項目に手軽にリンクできますよ!

 

受講した理由③

倍速機能があるので、自分に合ったスピードに調整ができてよかったです!

 

IFRSのプロジェクトに参加して感じたこと

貴重な経験ができました。導入プロジェクトはわからない事が多いけど、そこから得られることも多いです!知識と達成感を味わいたい人は、ぜひIFRSを検討している企業で働いてみてください!

 

-IFRSの実務