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【上場企業勤務】ホールディング会社で働くには?ベテラン経理が詳しく解説【働きがいあり】

ホールディングス会社とは
ホールディングス会社って何であるんだろう?
考える人

 

ホールディング会社の仕事内容が知りたいな。
考える人

 

ぷらいむ
たくさんの子会社を管理している会社です。

ホールディングス会社の特徴と合わせて解説しますね。

 

この記事の内容

  • ホールディングス会社の特徴
  • ホールディングス会社で働くメリット・デメリット

この記事では「ホールディングス会社で働いている経験をもとに、なぜホールディングス会社が必要か?」を解説をします。

 

この記事を書いた人

 

こんな話を聞いた事はありますか?

ニュースで「○○ホールディング会社が誕生しました」「△△ホールディング会社が、□□会社を買収しました」と報道される事があります。

 

馴染みのない人は「ホールディング会社は、何をしているんだろう?」「そもそも、ホールディングス会社は必要なの?」といった疑問があると思います。

 

税金面などの難しい話はしません

わたしは数十社の子会社がある「ホールディング会社」で働いています。その経験をもとに税金面などの難しい話は省略して「ホールディング会社とは何か?」を簡単に解説しますね!

 



1.ホールディング会社とは?【3つの特徴を解説】

ホールディングとは

あなたは日本のホールディングス会社を何社知っていますか?

アサヒホールディングス

キリンホールディングス

サントリーホールディングス株式会社

Zホールディングス株式会社

株式会社セブン&アイ・ホールディングス

野村ホールディングス株式会社

他にもたくさんのホールディングス会社があります。グループ全体で見ると一つの事業だけでなく複数の事業をしている会社が多いです。

 

さらに巨大企業が多いです。最初にホールディングス会社が、どんな組織か解説しますね!

 

1-1.ホールディングス会社はどんな組織か?

ホールディングス会社の特徴を解説します。

①一つの親会社があってその下に複数の子会社がある

②多くの親会社は事業を行わずに子会社のサポートをしている

③子会社はそれぞれが意思決定を行う

④親会社から経営指導などの助言を行う

Holdings

このようにホールディングス会社は親会社があって、その下に子会社がいくつも繋がっています。

 

ホールディグス会社は「持株会社」とも呼ばれ「純粋持株会社」と「事業持株会社」に分ける事ができます。

1-1-1.純粋持株会社

純粋持株会社は事業をしていない場合が該当します。詳しくは後述しますが、事業は運営をせずに複数ある子会社を統括するイメージです。

 

子会社が複数あると横のつながりを強化する事でシナジー効果を産む事ができます。しかし子会社同士で協力する事は、お互いの力関係があるので難しい場合があるんです。

 

この場合に、純粋持株会社として子会社同士の強みを生かす事に注力して、会社全体の最低化を図る事を目的としています。

1-1-2.事業持株会社

事業持株会社は自社で事業を展開しながら子会社を保有する場合が該当します。この場合は、持株会社という名称を使わずに、単に親会社と位置付ける事が多いです。

 

持株会社と言われれる会社は、純粋持株会社を指す事が多いので純粋持株会社を前提に解説していきます。

1-2.ホールディングス会社の収益構造を知ろう

ホールディングス会社は「事業を行っていない」ので、お客さんから売上を獲得することはできません。それでは、いったいどこから売上を獲得するのでしょうか?

 

多くの場合は次のどちらか、または両方で収益を獲得しています。

①子会社から「配当金」をもらう

②子会社へ「業務サポート料」を請求 ※名称は様々です※

「それだけで、ホールディングス会社の従業員に給与を払えるの?」と疑問を抱くかもしれません。確かにホールディングス会社の役員の報酬は多額になります。

 

しかし子会社から驚く金額の請求をするので、親会社は赤字になることはありません。多い場合は子会社の利益の半分くらいは親会社に色んな名目で支払っています。

 

税務署から指摘されないように調整します

親会社が子会社に業務サポート料などの請求をする場合は、その金額に合理性がなければ子会社の費用(損金)として認められない場合があります。

 

そうなると親会社は業務サポート料を収益計上して、子会社は費用(損金)計上できない事態になり税金面で不利になるので注意が必要です。特に上場準備会社は要注意です。

1-3.ホールディング会社は必要なのか?

子会社からの色々な請求をしないと利益が出ないのであれば「ホールディングス会社は必要ないのでは?」と疑問を頂くかもしれません。

 

ホールディングス化のメリットとして、子会社が多い場合はグループ全体の最適化が図れます。

 

さらに親会社が上場をしている場合は、投資家に向けて開示資料を提出する必要があります。開示資料を作るときに、子会社が多い場合は資料を作成するのが難しくなります。

 

ホールディング会社に開示資料作成の部門があれば、開示業務に集中して専門性を身につける事ができるんです。

 

ホールディング会社は「絶対に必要」というわけではありません。次に「メリット」と「デメリット」もあるので解説していきます。

 



2.ホールディング会社にする3つのメリット

メリット
ホールディングス会社の3つのメリットを解説します。

①トップダウンの意思決定がやりやすい

②子会社と適度な距離を保てる

③社内を少数精鋭にできる

 

同じグループ会社でも、場所が違って取引先が異なれば色々なノウハウが積み重なります。

 

全ての情報をまとめると膨大な量になりますが、選りすぐりの情報を集める事が出来れば、会社にとって最適の取引が出来るようになります。

 

人が多くなるとアイデアも増えます。それではホールディング会社の、それぞれのメリットを解説しますね!

2-1.トップダウンの意思決定がやりやすい

物事を決めるときに人数が多すぎて決めれない事があります。これは会社でも同じです。

 

多数決をすると責任のない決定になるので、責任を明確にして意思決定をする必要があります。

2-1-1.子会社の様々な意思決定を責任を明確にしてできる

ホールディング会社は子会社の「筆頭株主」なので、ホールディング会社は様々な決定権があります。

 

重要な決定事項は定款によって異なりますが、重要度によって必要な議決権の割合が異なります。立法機関の改正の議決に似ていますね。

①議決権の3分の2以上の獲得

②議決権の3分の1以上の獲得

③議決権の過半数の獲得

親会社であるホールディングス会社は子会社の議決権の大部分を保有しているので、子会社はその決定に従う必要があるんです。

 

そしてホールディングス会社が決定したので、ホールディングス会社に責任がある事は明白です。責任の所在もはっきりしていますよね。

 

2-1-2.子会社の立場が下とは考えない

ここで注意が必要なのは「ホールディングス会社」だから偉いわけではなく、それぞれに役割分担があるという事です。そもそも子会社がないとホールディングス会社は必要ありません。

 

これは上司と部下の関係にも当てはまります。上司は偉くて部下が劣る事はありませんよね。本田宗一郎は次の発言をしています。

長というのは組織上の役割を示すためのものであって、決してその人物の偉さを表すものではない。〜〜本田宗一郎〜〜

 

子会社の事情は子会社がよく理解しているので、ホールディングス会社と対等に問題解決する必要があります。

 

2-2.子会社と適度な距離を保てる

組織は人間関係で成り立っているので、距離が近すぎると悪い部分が見えてしまい不満が起こる場合があります。

 

距離感は大事です

組織間の関係は、友達の状態であれば許せた事が恋人になると許せないのに似ています。

 

何を言っているのだと思うかもしれませんが、組織は仕事を求めたり仕事を求められたりする関係なので、適度な距離感が必要と言うことです。

 

適度な緊張感もあった方が良いですね。緊張感がないと、仕事を間違った場合に笑って終わらせたり、関係が悪化するから言いたくないといった、組織の中では起こってはいけない事が、起こってしまいます。

2-3.社内を少数精鋭にできる

ホールディングス会社は、人数が少ない事が多いです。グループ全体の従業員が「3,000人」を超えていても、ホールディングス会社の従業員は「20人」の場合があります。

 

少数だと業務の幅が広がる

組織は少数人数で業務をしていると、自然と精鋭部隊になります。状況は違いますが、ベンチャー企業は人数が少ないので、自然と精鋭部隊になります。そうならないと、組織が継続できないからです。

 

企業経営の大きな成果は、少数の社員がもたらす 〜〜ピーター・F・ドラッカー〜〜

 

また、個人的に感じていることは、ホールディングス会社にいると「特別な社員の感じが出せる」ので、従業員のモチベーションを上げる効果もあります。あくまでも「感じ」であって、実際は特別ではありません。



3.ホールディング会社にする3つのデメリット

デメリット

ホールディングス会社の3つのデメリットを解説します。

①子会社と微妙な距離が出来る

②顧客と接点がない

③業界の知識が身につかない

 

社内組織の考えと同様に、会社数が多くなると統制を取るのが難しくなります。グループ会社で同じ事業をしていて同じ社外の会社と取引をしているのに、取引金額が異なる場合があります。

 

お互いが隠しているわけではなく、取引について共有する機会がない場合があるからです。これはグループ全体で考えると改善すべき事項になります。

 

それではホールディング会社のそれぞれのデメリットを解説しますね!

3-1.子会社と微妙な距離ができる

メリットとして子会社と適度な距離を保てると解説しましたが、接し方を間違えると信頼関係が崩れてしまう場合があります。

 

 子会社とコミュニケーションが不足する

信頼関係が崩れる事によりコミュニケーションが不足すると、正しい情報が入手できない、不正を見過ごしてしまう事態が発生します。

 

「正しい情報が入手できない事があるのか?」と疑問に思うかもしれませんが、実際に起こるのです。

 

なぜ正しい情報が入手できないのか?

子会社から親会社に決算情報を報告をするタイミングは、子会社側で確定した内容がほとんどです。

 

子会社の担当者が社内で確定した内容を見て、その内容に不備がある事を見つけた場合に、信頼関係が無いとごまかされる場合があります。

「いまさら、この決定をやり直すは手間だな」と考えて不備のまま報告をされる場合があります

 

間違いを放置する事があります

会社は一度決定した事項に不備があったとしても、その不備を放置する事があります。関係者との調整は面倒で嫌がられる事が多いからです。

 

こういった事は、子会社との信頼関係がなくてコミュニケーション不足の場合に起こります。人は面倒なことはやりたくないんです。

3-2顧客と接点がない

ホールディングス会社の売上の対象は「子会社」です。

 

子会社は顧客とは考えにくい

さすがに子会社を顧客と考えるのは難しいです。通常は仲間と考えるでしょう。

 

事業は顧客に対して有益なサービスを提供して売上を獲得します。その売上を獲得するためにマーケティングや商品開発を行います

 

しかし、ホールディングス会社は通常そのような事をせずに、子会社との連携を最適化する事を目的にしています。

 

共通の目標は大事です

顧客がない場合、組織の中で共通の目標が持てない場合が多いです。部活動であれば「全国大会で優勝する!」などの共通の目標がある場合を想像して下さい。

 

目標に対して相違があった場合に、多少理不尽に感じてもそれが目標達成のためであれば、自分の気持ちを抑える事ができます

 

ホールディングス会社の場合は共通の目標がない場合が多いので、コロナのような外部要因があった場合に、会社として判断する軸がありません。

 

その結果、従業員の不満をまとめられずに、中途半端な判断になる場合があります。

3-3.業界の知識が身につかない

これは全ての会社に当てはまりませんが、ホールディングス会社は事業がないので、属している業界もありません。

 

業界のことを知らなくても、仕事ができてしまいます

業界のことを知らない数字を見ると、数字と睨めっこをする事が多くなります。

 

そして業界のことを知らなくても、連結決算などの知識があればホールディングス会社として仕事が出来てしまいます。

 

「業務ができるのであれば、別に良いのでは?」と思うかもしれませんが、実際にやってみると「別に今の会社で働かなく必要はないのでは?」と思えてきます。実際に業界は関係なく能力が発揮できるので、転職もできます。

 

やっぱり知識を身につけたい

しかし、その業界で働くのであれば業界のことを知って知識を深めたいので、わたしはデメリットと考えています。



4.ホールディングス会社のまとめ

要約

ホールディングス会社で働く人は、かなりの少数だと思います。わたしは、その少数に入って勤務しているので、その内情を紹介しました。

 

どの立場が偉いという事はありません

繰り返しますが「ホールディングス社と子会社」「上司と部下」の関係は、どっちが偉くて、どっちが劣るという事ではありません。

 

組織をうまく機能するために作って、業務を分類しているだけです。

 

ただ、ホールディングス会社は「連結決算業務」や「訴訟対応」など、ある一定基準の知識が求められるので、子会社よりも給与は高い傾向にあります。

 

今の時代は「給与」よりも「やりがい・楽しさ」が重視されるので「給与」はあまり気にしなくても、良いかもしれませんね。

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