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【連結仕訳を詳しく解説】実務で使える連結仕訳の覚え方をベテラン経理がわかりやすく解説

連結仕訳

 

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この記事を書いた人

ぷらいむ
私自身、経理未経験から経理の担当者として就職をして、現在は一部上場会社の連結決算主担当者をしています

 

私は連結精算表を一人で作成することができるので、作成に必要な仕訳は理解をしています。

 

どの仕訳も連結上のあるべき数値にするための調整なので、連結上のあるべき数値が理解できると必要な仕訳が作成できますよ。

 

また、連結仕訳は様々な種類があり、同じ取引でも会社によっては管理している名称が違う場合があります。

 

この記事ではよく使われている名称を使って解説をするので安心して読んでくださいね!



連結仕訳が必要な理由

連結仕訳が必要な理由

ぷらいむ
会社の規模が大きい場合は『連結決算』が必要な場合がありますよ

 

連結決算に関する知識は2017年に日商簿記2級の範囲に含まれたことで重要性が増しています。

 

日商簿記2級は商業高校で取得を目指すので高校生が連結決算を学習しているんです。

 

連結決算の重要性

企業の買収が直近10年で倍近く増加したことで連結決算の理解が必要

 

連結決算の取引を理解するためには『なぜ連結決算をするか?』を知る必要がありますよ。

連結決算をする2つの理由

  • 単純合算は正しくない
  • 株主に報告する

 

※『上場企業について詳しく知りたい』という方は、以下記事で読んで下さいね。

>>上場企業の経理はきついか?上場企業で働くベテラン経理が解説



連結仕訳を理解する

連結仕訳を理解する

ぷらいむ
連結仕訳は複数あり、それぞれ重要度が異なります

 

実務で使う連結仕訳の重要度を分けて解説しますね。

 

連結仕訳は『出現頻度』『難易度』を区分することができます。連結グループの形態によって異なりますが、一般的な連結グループを想定してます。

連結仕訳 出現頻度 難易度
投資と資本の相殺 ★★★★★ ★★★★★
内部取引の相殺 ★★★★☆ ★☆☆☆☆
棚卸未実現の相殺 ★★☆☆☆ ★★☆☆☆
固定資産未実現の相殺 ★★★☆☆ ★★★☆☆
貸倒引当金の調整 ★☆☆☆☆ ★☆☆☆☆
表示の相殺 ★★★★☆ ★★☆☆☆

※★が多いほど『出現頻度』or『難易度』が高い

 

『出題頻度』『難易度』が一番高いのは投資と資本の相殺です。ほかの連結仕訳は『出現頻度』の高さと『難易度』は比例しているわけではありません。

 

『出題頻度』が高くても『難易度』が低い場合があるんです。それでは、それぞれの仕訳を詳しく解説していきますね。

 

仕訳①:投資と資本の相殺

連結仕訳 出現頻度 難易度
投資と資本の相殺←注目 ★★★★★ ★★★★★

投資と資本の相殺は『資本連結』ともいわれて連結仕訳が必要な会社は必ず発生します。

 

必ず発生する理由は、連結決算では『親会社の子会社株式』と『子会社の純資産』を相殺するからです。実務でよく使われる6つの仕訳を解説しますね。

 

この6つの取引を理解できれば、実務で使う資本連結のおよそ8割はクリアできますよ。それでは各仕訳を数値を用いて解説していきますね。

 

難易度の高い取引

『株式の追加取得』や『連結範囲の変更を伴う取引』などは出現頻度は低いが難易度が高い

 

①新規連結

新たに子会社や関連会社が増えた場合『新規連結』に関する仕訳が必要です。

 

仕訳作成のために『連結範囲』『貸借対照表と純資産の増減』を設定しますね。

連結範囲

  1. O親会社:O社の決算期は12月31日
  2. K子会社:1月1日にO社がK社の発行する株式のうち60%を1,000,000で取得

貸借対照表と純資産の増減

O親会社

K子会社

 

『①新規連結』は子会社か関連会社になる場合は必ず発生して、のれんの金額を確定させる重要な仕訳です。取引を例に仕訳を作成しますね。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
純資産 500,000 子会社株式 1,000,000
のれん 700,000 非支配株主持分 200,000

各科目の計算方法

① 純資産:K社の期首純資産

② のれん:貸借差額

③ 子会社株式:O社の取得価額

④ 非支配株主持分:K社の期首純資産×40%

 

それでは『単純合算の場合』『連結調整の場合』の勘定科目の残高を見ていきましょう。

新規連結

 

投資の対象は会社の純資産です。『K社の純資産500,000の60%(300,000)』に対して『1,000,000の価値がある』と判断しました。

 

『単純合算』『連結調整』をした場合を比べると総資産と純資産が減少していますね。

 

総資産と純資産の減少理由

『子会社株式と純資産』を相殺して『非支配株主持分とのれん』に配分したため

 

そして貸借差額700,000が『のれん』として計上されます。K社の純資産500,000のうち40%は外部の株主なので『非支配株主持分』として計上されます。

 

②のれんの償却

子会社時にのれんが発生した場合は、一定期間にわたって償却する仕訳が必要です。

 

仕訳作成のために『連結範囲』『貸借対照表と純資産の増減』を設定しますね。

連結範囲

  1. O親会社:O社の決算期は12月31日
  2. K子会社:1月1日にO社がK社の発行する株式のうち60%を1,000,000で取得

貸借対照表と純資産の増減

O親会社

K子会社

 

 

『②のれんの償却』はのれんが発生した後に必要になる仕訳です。次の取引を例に仕訳を作成しますね。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
のれん償却費 35,000 のれん 35,000

各科目の計算方法

① のれん償却費:700,000÷20=35,000

② のれん:のれん償却費と同額

 

それでは『単純合算』の場合と『連結調整』をした場合の勘定科目の残高を見ていきましょう。

のれん償却

 

『単純合算』『連結調整』をした場合を比べると総資産と純資産が減少していますね。

 

減少の理由

資産として計上されている『のれん』が減少して費用となり利益剰余金が減少

 

のれんは『企業の純資産よりも高い価格で取得』した場合に資産計上します。のれんを償却できるかは議論がありますが定額で償却します。

 

③子会社の当期純利益の振替

子会社の中で100%の株式を取得していない場合は利益の調整が必要になります。

子会社にして利益の調整が必要な場合

① 子会社に該当

② 発行済み株式の100%未満を取得

 

この場合は外部の株主の持分について利益を振替る仕訳が必要です。『連結範囲』『貸借対照表と純資産の増減』を設定しますね。

連結範囲

  1. O親会社:O社の決算期は12月31日
  2. K子会社:1月1日にO社がK社の発行する株式のうち60%を1,000,000で取得

貸借対照表と純資産の増減

O親会社

K子会社

 

『③子会社の当期純利益の振替』は子会社が生み出した利益のうち外部株主に関する部分は費用とする考えです。次の取引を例に仕訳を作成しますね。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
非支配株主損益 80,000 非支配株主持分 80,000

各科目の計算方法

① 非支配株主損益:200,000×40%=80,000

② 非支配株主持分:非支配株主損益と同額

 

それでは『単純合算』の場合と『連結調整』をした場合の勘定科目の残高を見ていきましょう。

子会社の当期純利益の振り替え

 

『単純合算』『連結調整』を比べると影響はありません。厳密には純資産の中にある利益剰余金と非支配株主持分が相殺となります。

 

PLに影響

『調整は不要なのでは?』と感じますが、損益計算書の当期純利益の下に『非支配株主損益』として計上

 

さらに貸借対照表上でも『利益剰余金』『非支配株主持分』は決定的な違いがあり、非支配株主持分は親会社に帰属しないので注意が必要です。

勘定科目 帰属先
利益剰余金 親会社
非支配株主持分 外部(非支配株主)

 

④子会社の配当金の調整

子会社から配当を受けた場合は特別な調整が必要になります。『連結範囲』『貸借対照表と純資産の増減』を設定しますね。

連結範囲

  1. O親会社:O社の決算期は12月31日
  2. K子会社:1月1日にO社がK社の発行する株式のうち60%を1,000,000で取得

貸借対照表と純資産の増減

O親会社

K子会社

 

『④子会社の配当金の調整』は子会社から配当金を受け取った場合に調整が必要です。

 

調整の理由

親子間の配当は利益剰余金が減少して受取配当金が計上されるが、連結上ではお金が移動しただけと考える

 

次の取引を例に仕訳を作成しますね。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
受取配当金 60,000 利益剰余金 100,000
非支配株主持分 40,000

各科目の計算方法

① 受取配当金:配当×60%=60,000

② 非支配株主持分:配当×40%=40,000

③ 利益剰余金:配当=100,000

 

それでは『単純合算』の場合と『連結調整』をした場合の勘定科目の残高を見ていきましょう。

子会社の配当金の調整

 

『単純合算』『連結調整』をした場合を比べると変化はありません。『④子会社の当期純利益の振替』と同様に純資産の『利益剰余金』と『非支配株主持分』を相殺します。

 

⑤関連会社の利益の調整

関連会社から得られる利益は調整が必要になります。『連結範囲』『貸借対照表と純資産の増減』を設定しますね。

連結範囲

  1. O親会社:O社の決算期は12月31日
  2. M子会社:1月1日にO社がM社の発行する株式のうち20%を800,000で取得

貸借対照表と純資産の増減

O親会社

M関連会社

 

『⑤関連会社の当期純利益の振替』は関連会社が生み出した利益のうち株式の持分割合を乗じて利益計上します。

 

関連会社は子会社と違い関連会社の財務諸表を親会社の財務諸表に直接合算しません。取引を仕訳を作成しますね。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
関連会社株式 80,000 持分法投資損益 80,000

各科目の計算方法

① 関連会社株式:400,000×20%=80,000

② 持分法投資損益:関連会社株式と同額

 

それでは『単純合算』の場合と『連結調整』をした場合の勘定科目の残高を見ていきましょう。

関連会社の利益の振り替え

 

『単純合算』『連結調整』をした場合を比べると総資産と純資産が増加しました。関連会社から得られる利益分が増加します。

 

⑥関連会社の配当金の調整

関連会社から配当を受けた場合は特別な調整が必要になります。『連結範囲』『貸借対照表と純資産の増減』を設定しますね。

連結範囲

  1. O親会社:O社の決算期は12月31日
  2. M子会社:1月1日にO社がM社の発行する株式のうち20%を800,000で取得

貸借対照表と純資産の増減

O親会社

M関連会社

 

『⑥関連会社の配当金の調整』は関連会社から配当金を受け取った場合に調整が必要です。取引を仕訳を作成しますね。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
受取配当金 40,000 関連会社株式 40,000

各科目の計算方法

① 受取配当金:400,000×20%=40,000

② 関連会社株式:受取配当金と同額

 

関連会社配当金の考え方

関連会社からの配当金は、関連会社の株式の一部をお金で受け取ったと考える

 

それでは『単純合算』の場合と『連結調整』をした場合の勘定科目の残高を見ていきましょう。

関連会社の配当の調整

 

関連会社から受け取った配当金を、関連会社株式からマイナスをします。連結上で考えると現金は増えたけど、株式価値が減少したと考えます。

 

仕訳②:内部取引の相殺

連結仕訳 出現頻度 難易度
内部取引の相殺←注目 ★★★★☆ ★☆☆☆☆

 

連結グループで発生した取引は連結調整が必要です。『連結範囲』『貸借対照表と純資産の増減』を設定しますね。

連結取引

  1. 7月1日:O社はK社に1,000,000を年1%で貸付。6月30日に返済予定
  2. 12月31日:O社はK社から500,000の商品を購入。代金は翌月に支払い予定
  3. 12月31日:貸付金の利息5,000を現金で受け取る

 

内部取引は親会社と子会社の取引と連結仕訳を比較すると理解しやすいです。『親会社』『子会社』『連結仕訳』に分けて仕訳を作成します。

O親会社の仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
貸付金 1,000,000 現金 1,000,000
仕入高 500,000 買掛金 500,000
現金 5,000 受取利息 5,000
 K子会社の仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 1,000,000 借入金 1,000,000
売掛金 500,000 売上高 500,000
支払利息 5,000 現金 5,000
 連結仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
借入金 1,000,000 貸付金 1,000,000
売上高 500,000 仕入高 500,000
受取利息 5,000 支払利息 5,000

連結仕訳を作成する事でO社とK社の取引を全て取り消す事ができます。現金はO社とK社を単純合算をすると移動しないので調整不要です。

 

それでは『単純合算』『連結調整』の勘定科目の残高を見ていきましょう。

内部取引消去

 

『単純合算』の場合と『連結調整』を加えた合算を比較すると、純資産と当期利益は変動がなくそれ以外の科目が減少していますね。

 

内部取引の相殺は各科目で見ると増減しますが相殺の結果は利益には影響しません。

 

仕訳③:棚卸未実現の相殺

連結仕訳 出現頻度 難易度
棚卸未実現の相殺←注目 ★★☆☆☆ ★★☆☆☆

 

連結グループの取引で連結上で未実現利益がある場合に連結調整が必要な取引があります。

未実現利益

未実現利益とは連結グループ会社間の内部取引から生じた利益のうち、期末までに実現していない取引

 

実務では連結グループ内の取引で利益を乗せて販売します。ここで重要なことは『商品を外部に販売したか?』です。

 

購入した会社が期末に商品を保有している場合は連結グループ内の商品の移動で商品の金額が大きくなりますよね。

 

未実現調整が必要な理由

連結グループ内の取引で商品の金額が大きくなることは過大表示なので連結調整が必要

 

未実現利益には『棚卸資産未実現』『固定資産未実現』があります。『固定資産未実現』は後程解説しますね。

 

それぞれの違いは未実現利益の『解消の方法』『解消の期間』です。

連結仕訳区分 解消の方法 解消の期間
棚卸資産未実現 棚卸資産の販売 棚卸資産の販売時
固定資産未実現 固定資産の償却 固定資産の償却期間

 

棚卸未実現を理解するために『連結範囲』『貸借対照表と純資産の増減』を設定しますね。

連結取引

  1. 11月30日:O社はK社に10%の利益を上乗せして550,000で商品を販売。代金は現金で受け取る
  2. 12月31日:O社はK社から購入した商品はすべて在庫

 

『親会社』『子会社』『連結仕訳』に分けて仕訳を作成しますね。

 O親会社の仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 550,000 売上高 550,000
 K子会社の仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入高 550,000 買掛金 550,000
商品 550,000 仕入高 550,000
 連結仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売上高 550,000 仕入高 550,000
仕入高 50,000 商品 50,000

各科目の計算方法

① 連結仕訳の仕入高:550,000÷110%×10%

② 連結仕訳の仕入高:連結仕訳の仕入高と同額

 

それでは『単純合算』の場合と『連結調整』をした場合の勘定科目の残高を見ていきましょう。

棚卸未実現

 

『単純合算』の場合と『連結調整』を加えた合算を比較すると各科目だけでなく当期利益が減少しています。

 

理由はO社からK社に販売した商品には50,000の利益が上乗せしているため連結上は50,000の利益は消去する必要があるからです。

 

利益になるタイミング

50,000の利益はK社が外部に販売したときに連結上の利益になる

 

仕訳④:固定資産未実現の相殺

連結仕訳 出現頻度 難易度
固定資産未実現の相殺←注目 ★★★☆☆ ★★★☆☆

連結グループで発生した取引の中で連結上で未実現利益がある場合に連結調整が必要な取引があります。

 

固定資産未実現を理解するために『連結範囲』『貸借対照表と純資産の増減』を設定しますね。

連結取引

  1. 1月1日:O社はK社に550,000で建物の引き渡しを完了し代金は現金で受け取る。10%の利益を上乗せ
  2. 1月1日:K社は残存価額0、耐用年数10年と設定した

 

『親会社』『子会社』『連結仕訳』に分けて仕訳を作成しますね。

 O親会社の仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 550,000 売上高 550,000
 K子会社の仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
建物 550,000 現金 550,000
減価償却費 55,000 建物償却累計額 55,000
 連結仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売上高 50,000 建物 50,000
建物償却累計額 5,000 減価償却費 5,000

各科目の計算方法

① 連結仕訳の売上高:550,000÷110%×10%

② 連結仕訳の減価償却費:50,000➗10

 

それでは『単純合算』の場合と『連結調整』をした場合の勘定科目の残高を見ていきましょう。

固定資産未実現

 

『単純合算』の場合と『連結調整』を加えた合算を比較すると各科目だけでなく当期利益が減少しています。

 

理由はO社からK社に引渡した建物には50,000の利益が上乗せしているため連結上は50,000の利益は消去する必要があるからです。

 

建物は耐用年数で費用計上

K社は建物として資産計上しているので損益は影響していない

 

利益の50,000はK社で償却するので減価償却費の計上のタイミングに合わせて連結仕訳で相殺します。

償却期間

 

固定資産未実現は逆仕訳なのでイメージが困難ですが個社仕訳と連結仕訳を合算すると理解しやすいですよ。

 

仕訳⑤:貸倒引当金の調整

連結仕訳 出現頻度 難易度
貸倒引当金の調整←注目 ★☆☆☆☆ ★☆☆☆☆

内部取引相殺の連結グループで発生した取引で、貸倒引当金を設定した科目に増減がある場合に連結調整が必要になります。

 

貸倒引当金の調整を理解するために『連結範囲』『貸借対照表と純資産の増減』を設定しますね。

連結取引

  1. 12月31日:O社はK社に2,000,000で商品を販売して代金は翌月入金
  2. 12月31日:O社は売掛金残高に対して1%の引当金を設定

 

『親会社』『子会社』『連結仕訳』に分けて仕訳を作成しますね。

 O親会社の仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売掛金 2,000,000 売上高 2,000,000
貸倒引当金繰入 20,000 貸倒引当金 20,000
 K子会社の仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入高 2,000,000 買掛金 2,000,000
 連結仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売上高 2,000,000 仕入高 2,000,000
買掛金 2,000,000 売掛金 2,000,000
貸倒引当金 20,000 貸倒引当金繰入 20,000

各科目の計算方法

① 貸倒引当金:2,000,000×1%

 

それでは『単純合算』の場合と『連結調整』をした場合の勘定科目の残高を見ていきましょう。

貸倒引当金

 

実務ではグループ間に対する債権は貸倒引当金を設定しない場合が多いです。

 

貸倒引当金の調整が必要な理由

連結子会社の中には上場している場合、独自のルールで処理をしている場合がある

 

連結グループ内で会計処理が異なる場合は連結仕訳で連結グループの基準に調整する必要があります。

 

会計処理が異なる理由は、株主が異動したことで会計基準をすぐに統一することは難しい場合です。

 

仕訳⑥:表示の相殺

連結仕訳 出現頻度 難易度
表示の相殺←注目 ★★★★☆ ★★☆☆☆

 

連結財務諸表が確定する前の作業で『表示の相殺』があります。

表示の相殺が必要な理由

個社の財務諸表で正しい区分でも連結グループで考えると両建てになったり、異なる区分の場合がある

 

細かい設定よりも連結財務諸表を見るほうが理解できるので見てみましょう。

表示の相殺の相殺前

 

単純合算の場合は為替差益と為替差損が両建てになっています。

 

これらは外貨建ての債権債務から発生した結果なので連結上ではどちらかに集約する必要があります。

 

為替差益と為替差損を相殺する仕訳を作成しますね。

 連結仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
為替差益 150,000 為替差損 150,000

 

表示の相殺を反映した後の数値を見てみましょう。当期利益は変わりませんが、両建てになっていた為替差益と為替差損が為替差益に集約できました。

表示の相殺の相殺後

 

ここで表示の相殺が必要になる例を紹介します。

表示の相殺が必要な例

① 為替差損益の調整

② 投資収益、投資損失の調整

③ 賃貸売上と賃貸原価の区分の調整

④ 適切な科目に振替

 

『適切な科目に振替』は連結精算表が社内で確定した後に、注記資料の作成や監査法人の指摘で修正を要求された場合に仕訳で調整します。

 

実務のポイント

連結精算表が確定した後に子会社の数値を修正するのは工数がかかるので仕訳で調整する



連結仕訳のまとめ

連結仕訳のまとめ

この記事では実務で必要になる6つの連結仕訳を解説しました。

 

連結仕訳は複数の単体決算を合算した後に調整をするので単体決算の取引を理解する必要があります。

 

さらにキャッシュ・フロー計算書を作成するので、主要な科目の期首残高と期末残高の増減内容を正しく理解して仕訳を作成する必要があります。

 

連結仕訳は仕訳を作成した数だけ理解が深まるので、頭で考えるよりも手を動かすことをおすすめします!

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